「ギメ東洋美術館浮世絵名品展」の感想 太田記念美術館

バランスの取れた展示内容で浮世絵ファンならずとも、おすすめしたくなる、そんな充実した内容でした。原宿・表参道はいつものごとく、若い人でいっぱいですが、素通りはもったいない・・そう言いたくなってしまう、そんな浮世絵の展覧会です

0701130119.JPGそうは言うものの、思いのほか観客が多かったです。そのためか館内は気温が暑かったですね。太田記念美術館はいつも照明がとても暗いので、ちょっと鑑賞はしづらいところはあります。保存のため仕方ありませんが、そんなデメリットを気にしないくらい良質な展覧会でした。

すべて浮世絵版画を見終えて感じたのは、みな保存状態がとても良かったことです。

特に写楽は印象的で、明らかに東京国立博物館のそれより状態が良いものでした。
先日、東京国立博物館で小特集として写楽の大首絵が十何点ほど一気に展示されていましたが、保存状態の差は明らかでした。

そういえばギメ東洋美術館所蔵の写楽を見るのは、今は無き池袋の東武美術館で1995年に開催された「写楽展」という大回顧展以来久々です。あの同時期にNHKで写楽を特集した番組が放映されていました。1時間ほどの特集番組でしたね。そこでギメ東洋美術館にある写楽が紹介されていて、館内のスタッフが「私たちはこれらの写楽を滅多に公開しません」とはっきり言っていましたね。滅多に公開されないギメ東洋の写楽もじっくり見ることができました。

そんな保存状態の良さが、また一段と作品の魅力を再認識させるものがありまして、
例えば歌麿の美人大首絵が何点かありましたが、その保存の良好さが、芸術性の高さを押し上げているのです(浮世絵で芸術性うんぬんかんぬん言うのは、実はあんまり好きではないのですが。芸術のために描かれたわけではありませんからね)。歌麿の前で思わず「うーん」とうなってしまいました。

そして、本展の主役である《竜虎図》についてですが、なかなかの優品です。欲しいですねえ(笑)。これが90歳近くの作品ですか。それだけでも凄いことですね。

《竜虎図》が太田記念美術館の《虎図》とギメ東洋美術館の《龍図》がペアーであることがわかった経緯について、図録で事細かに説明されています。とても興味深い内容です。

長年の願望だったギメ東洋の浮世絵調査が実現できて、興奮のあまりホテルであまり寝れられなかったことや、《龍図》がつい最近ギメ東洋美術館に寄贈された作品で、寄贈したのはパリ在住で2003年に亡くなられた薬剤師の方だそうで、その薬剤師の方についても詳細に説明されています。一見冷静だけど実は思わぬ新発見に興奮している・・なんとなくそんな感じが伝わってくる永田副館長の寄稿文です。そんな永田氏がうらやましいです。

0701130122.JPGただ肉筆浮世絵がの他に4つほどしか無かったのは少し残念ですね。肉筆がもっとあったらもっと分厚い展覧会になったことでしょう。しかしほとんどが保存・完成度ともに良質な浮世絵版画でしたから、期待通りの内容と言っていいでしょう。

浮世絵初期から(なぜか菱川師宣はありませんでしたが)春信、清長、写楽、歌麿、北斎、歌川派、勝川派、河鍋暁斎まで主要なところはまんべんなく押さえられていますし、全体的にほどよいバランスの良さもありました。浮世絵の入門にも最適に思います。

あともう一つ。この間は「江戸の誘惑展」にてボストンにあれだけ素晴らしい肉筆の浮世絵があったことにショックを受け、今度はフランスに良質の浮世絵版画が多数あることに多少のショック・・とまではいかなくても、考えさせられるものがありますね。

自国の文化遺産が他国にたくさんあるという現象について、いささか情けなくないか?と思ってしまいますが、そういえば南宋時代の中国絵画の優品が実は多数日本にあるという事例もありますし、そんなものかもしれません。

ギメ東洋美術館浮世絵名品展は大阪市立美術館に今春、巡回します。

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