「国宝 伴大納言絵巻展」の感想

国宝・風神雷神図屏風展から今度は国宝・伴大納言絵巻展という立て続けに東京・出光美術館へ出向くのは初めてかもしれないです。

なにしろ、全巻が展示されるということで、忘れないうちに行ってきました。この伴大納言絵巻、部分的には見たことは過去何度かあったのですが、全巻通して見るのはこれが初めてでした。

伴大納言絵巻の物語については、一応説明しておくと、

『平安時代、大納言の位にあった伴善男(ばんよしお)は、自分の出世のため左大臣のポストを狙っていた。そこでどうしたかというと応天門を放火して、それをその時の左大臣・源信(みなもとのまこと)がやったということにし、その罪によって彼を失脚させ、かわって自分が左大臣になるということをたくらんだのである。

うまくまんまと応天門の放火に成功した伴善男は、清和天皇に源信がやったんだよとうそぶき、処罰が下されたのだが、その話を聞いた太政大臣の藤原良房(よしふさ)は、処罰をするまえに、十分な調査をするべきだと提言した。天皇は「それもそうだ」ということで
調べた結果、源信は無実であることがわかり、結局犯人はわからずじまいになってしまう。

しかし放火事件の半年後、放火現場の目撃していたある子供が、子供どうしのけんかがきっかけで犯人は伴善男であることが判明し、結果彼は島流しの刑になった・・・』

というお話。

伴善男が放火した応天門が勢いよく燃え盛る炎や黒雲の表現は数ある日本絵画のなかでも秀逸なものの1つに数えられます。

また火災に驚く群集たちや、源信が処罰されるのを知った女房たち(あとになって伴大納言の女房たちもですが)の嘆き悲しむ場面、舎人が判官から尋問を受けるという見る者のイマジネーションをかなり刺激するような名場面など、さすが見ごたえのある絵巻です。

当時の人が着ているものや、よろい兜、など歴史的資料価値もありますし、美術的にも完成度が高いという、まさに超一級品の作品です。

ただし、以上のストーリがそのまま絵巻作品として順番にキチンと繰り広げられているというと、決してそんなわけではなくて、欠落している部分があったり、伴大納言のお顔をはっきり見せてくれなかったりと歯がゆい場面がところどころあります。

あと絵巻独特の表現方法である「異時同図法」というものを知っていないとわかりずらかったりというところもあるので、これをあらかじめ知っておいた上で、この絵巻物を見てみたほうがよいです。

ストーリーは知らなくても、たくみな人物描写や応天門の炎の勢いなどを味わうことが出来ますが、知っておいた上で鑑賞すると面白さは倍増するでしょう。

「異時同図法」というのは、たとえばこの伴大納言絵巻では、

1.子供のけんかを親が怒って近づいてくる場面
2.けんか相手の髪の毛をむしり取って(残酷!)勝ち誇っている場面
3.子供が母親によって連れ帰られる場面

の3つがひとつの画面に描かれているのです。そういう表現方法ですが、わかっていないと一見よくわからないです。

展覧会の趣旨は、この絵巻のなぞや面白さを詳細に解明しようと、本格的な科学的・・というか光学的調査をしたその成果をふまえものですが、わかったことがあった一方、かえってなぞが深まってしまったこともあるようです。

調査結果に内容については、会場内や新しい図録(素晴らしい画質で収録されています)で説明されているので割愛しますが、しかしそれにしてもです。鳥獣戯画もそうですが、鎌倉あたりの時代からもうすでにりっぱな漫画アニメが存在していたという驚きをあらためて感じた次第です。

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