すぐわかる 画家別抽象絵画の見かた
私は絵画だったら何でも好きというわけでもないのですが、ほぼおおよそジャンル問わず観ています。他にもそういう方はいると思いますが、そんなたくさんではないでしょうね。
板橋区立美術館の館長・安村敏信氏が書かれた「美術館商売」という本の中で「美術だったら何でも好きという人はあまりいない」と書かれてあったのですが、私もだいたい同感です。特別展の会場内で休憩用のイスにずーと座っていたことがあるのですが、観客を眺めているとそれを感じることができるでしょう。美術鑑賞が目的というより、みなさんあらゆるアミューズメントパークの一つとして来ているのです。私の場合は両方の気分ですけどね。それが理想です。
そういった「美術だったら何でも観るわけではない大半の観客」とちがい、何でも観る私は抽象絵画も好きです。江戸絵画もフランス印象派も好きな人間が抽象絵画も好き、なんて人はいますか?機会あったらちょっとアンケートでもしてみたいですね。
すぐわかる 画家別抽象絵画の見かたという本があるのですが、抽象絵画を楽しめる人も、いまいちわからず楽しめない人にとってもよくまとまっている入門書になっています。川村記念美術館や東京都現代美術館とかブリヂストン美術館へ行く前に、ちょこっとこの本見ておくといいですね。
その良書ですが、抽象絵画の出発をセザンヌやゴーギャンからとするというのは予想外でした。でもその2人の絵を観れば、別に不思議な話ではないとすぐ納得できるわけです。だんだんと人物とか物体などが単純化が始まっていくわけです。いきなり歴史に抽象絵画が登場するというのは考えられません。物事はかならずつながっているのです。
あと幾人か私が知らない画家もいました。クプカ、バッラ、フランケンサーラーなど知らなかったです。当然観てみたいですね。というか、かもしかしたらどこかの美術館で通り過ぎてしまっていた、かもしれません。
この本の監修者である本江邦夫氏は冒頭で、抽象絵画を「わけわからんとそれの理由で嫌う人、反対にこれこそ現代芸術と誉めそやす人、どちらも極端だと思う」と述べていますが私もそう思います。ただ抽象絵画の良さを素人が説明するのは難しいですね。私の場合具象絵画(ふつうの絵ですね)を観る感動はもちろんあるけど、抽象絵画でも見る感動はある、とだけ言っておきましょうか。
たしかに抽象絵画はわけがわかりません。こういうのは「なんだかわかんないけど、どこかいい」という小学生でも言える感想になってしまいがちですが、つまり抽象絵画には心を動かす何かを持っているとははっきり言えます。
もっとも「美術だったら何でも好きという人はいない」のと同様、抽象絵画だったらなんでもいい、というわけではありませんが。
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